脊負せお)” の例文
またそつとてゝとき頸筋くびすぢかみをこそつぱい一攫ひとつかみにされるやうにかんじた。おつぎはそと壁際かべぎは草刈籠くさかりかご脊負せおつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その四角なる雪を脊負せおひあるひは担持になひもちにするなど暖国だんこくの雪とは大にことなり、雪にえだを折れじと杉丸太をそへてしばりからげおきたる庭樹にはきなども
ちょうど、このとき、一人ひとり老人ろうじんが、おおきなふくろのようなものを脊負せおって、やぶれた、マンドリンにわせておどっていました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
草鞋わらじばきの古トンビや、市の学校へゆく学生や、大きな風呂敷を脊負せおった行商人たちや、そんなのがウルさそうに電車を見送ってはあるいていた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
新しいランドセルを脊負せおひ、新しい草履袋をさげて、一年生のすすむちやんは、元気よく学校から帰つて来ました。
母の日 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ちゃんと引取りを入れて脊負せおうて来たのじゃから、何処どこからも尻も宮もやへん、ヤなんでもこれは屋敷から盗んで来た物に違いないが、屋敷で取られたと云うては
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
出入りの八百屋の御用聞ごようき春公はるこうと、うち仲働なかばたらきたまと云うのが何時いつか知ら密通みっつうして居て、或夜あるよ、衣類を脊負せおい、男女手を取って、裏門の板塀いたべいを越して馳落かけおちしようとした処を
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
自分には、わざわいのかたまりが十個あって、その中の一個でも、隣人が脊負せおったら、その一個だけでも充分に隣人の生命取りになるのではあるまいかと、思った事さえありました。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「おくんな。」とつて、やぶしたをちよこ/\とた、こゝのツばかりのをとこ脊丈せたけより横幅よこはゞはうひろいほどな、提革鞄さげかばんふるいのを、幾處いくところ結目むすびめこしらへてかたからなゝめに脊負せおうてゐる。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この流儀が果して世の中の手本になってい事か、悪い事か、ソレも無頓着むとんじゃくだ、ければはなはよろしい、悪るければソレまでの事だ、そのきまで責任を脊負せおい込もうとは思いません。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
新太郎ちやんは、赤ん坊の妹を脊負せおつて家の横で、たた独楽こままはしてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
稀に遊びに来ては甘藷いもを洗ったり、外竈そとへっついいて見たり、実地の飯事ままごとを面白がったが、然し東京の玄関げんかんから下駄ばきで尻からげ、やっとこさに荷物脊負せおうて立出る田舎の叔父の姿を見送っては
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その四角なる雪を脊負せおひあるひは担持になひもちにするなど暖国だんこくの雪とは大にことなり、雪にえだを折れじと杉丸太をそへてしばりからげおきたる庭樹にはきなども
さうしてぎつとんでおもつた草刈籠くさかりかご脊負せおつた。其處そこらのはたけにはつちひらいたやうに處々ところ/″\ぽつり/\と秋蕎麥あきそばはなしろえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おじいさんは、おおきなふくろ脊負せおって、ひろゆき野原のはらとおって、破船はせんよこたわる海岸かいがんしてかえりました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
たけは四寸二分で目方も余程あるから、慾の深い奴はつぶしにしても余程のねうちだから盗むかも知れない、厨子ずしごと貸すにより胴巻どうまきに入れて置くか、身体に脊負せおうておきな
それで気転のいた奴が、態々わざわざ、欠席していたので、私のうちまで迎いに来て、その裁判をしてくれと云うので、私は弟を脊負せおったまま、皆のいる所へ行って、「木山弾正である」という説明をして
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
今日もやはり赤ん坊の妹を脊負せおつて。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
勘次かんじ草刈籠くさかりかご脊負せおつて巡査じゆんさあといて主人しゆじんいへ裏庭うらにはみちびかれた。巡査じゆんさ縁側えんがは坐蒲團ざぶとんこしけたとき勘次かんじかご脊負せおつたまゝくびれてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
田中のものこの武士が米俵を脊負せおひしものといひしをきゝて、心におぼえあればさてはと心づき、これかならず行者ぎやうじやばちならんと行者ぎやうじやたるあらましをかたりきかせ
日傘をし包を十文字に脊負せおい、ガラ/\下駄を穿いて豪家ものもちのお内儀さんでも買物に出まするくらいだから、お瀧も小包を提げて買物を致し、自分の家へ這入りに掛る処を茂之助が見付け
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ある日米たわら脊負せおひて五六町へだてたる中村といふへゆく、そのみち三国海道みくにかいだうなれば人あしもしげし。
どんな山の中でもきます、わたし生国しやうこく越中ゑつちう富山とやまで、反魂丹売はんごんたんうりですから、荷物にもつ脊負せおつて、まだくすりひろまらない山の中ばかりつて歩くのです、さうしてまた翌年よくねんの山の中をつて歩くので
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
脊負せおった物もまた母が持って居た多分の金も引浚ひきさらっての尼が逃げました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
上「ヘエ只今總助はんにお頼み申して此の通り脊負せおうて参りました」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小「コレ政七、昨夜重三郎はお刀を脊負せおって帰ったか」