穀物こくもつ)” の例文
安心あんしんあそばしてください、下界げかい穀物こくもつがすきまもなく、に、やまに、はたにしげっています。また樹々きぎには果物くだものかさなりってみのっています。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえの気にかかっているというのは、きっと、おまえのはたけ穀物こくもつが、たくさんとれるかどうか、というようなことでしょう。
村の人たちは、平野をひらいて穀物こくもつや野菜を作ったり、野原に牛や馬を飼ったりして、たのしく平和にくらしていました。
天狗笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
平次は塀の外の畑の中から、穀物こくもつを乾した時使つたらしい一本の棒、——三間ほどあるたくましい竿を持つて來ました。
ならはせんと思へども然るべき師匠ししやうなきにより江戸兩國りやうごく横山町よこやまちやう三丁目かどにて折廻をりまはし間口奧行拾三間づつ穀物こくもつ乾物かんぶつるゐあきなひ則ち古河の吉右衞門が出店なるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されどこの事速かに起りてナイアーデとなり、羊、穀物こくもつ損害そこなひなくしてこのむづかしき謎を解かむ 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
忍剣の口へ、ふしぎなあじのするものを入れた——木のでもない、穀物こくもつでもない、菓子かしでもない、もちでもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「開け、小麦。」だの、「開け、あわ。」だのと、おぼえているかぎりの、穀物こくもつの名を言ってみましたけれど、やっぱり、だめでした。戸は一寸も開きませんでした。
なんじらの穀物こくもつかるときには汝等なんじらその田野たはた隅々すみずみまでをことごとかるべからずまたなんじ穀物こくもつ遺穂おちぼひろうべからずまたなんじ菓樹園くだものばたけくだもの取尽とりつくすべからずまたなんじ菓樹園くだものばたけおちたるくだもの
聖家族 (新字新仮名) / 小山清(著)
○ケセネは米ひえその他の穀物こくもつをいう。キツはその穀物をるる箱なり。大小種々のキツあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このお婆さんも不思議な風体ふうていで、頭は白髪が茫々ぼうぼうと乱れているのに、わらで編んだ笠をかむり、身には長い穀物こくもつの袋に穴を明けたのに両手と首を通して着ていて、足には片方かたっぽうにスリッパ
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
食物しよくもつはる樹木じゆもく若芽わかめるとこのんでべ、またしるおほくさべますが、なつになつて草木くさき生長せいちようすると穀物こくもつやそばなどべ、さむくなつてくさしほれると森林内しんりんないでぶな、かし
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それを神産霊神かみむすびのかみがお取り集めになって、日本じゅうの穀物こくもつの種になさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それでも勘次かんじ從來これまでよりも餘計よけいつひやさねばならぬ穀物こくもついてかれ淺猿さもしいこゝろ到底たうていさわがされねばならなかつた。勘次かんじ卯平うへいときにはそれとはなくひとりぶつ/\とつぶやくことがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あるひはほのかな穀物こくもつの花か
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
二人ふたりとも勉強家べんきょうかで、よくはたらいていましたから、毎年まいねん穀物こくもつはたくさんにれて、二人ふたりともこまるようなことはありませんでした。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、穀物こくもつのすばらしいにおいにさそわれそうになっても、がまんにがまんをして、規則きそくただしく進軍しました。
最近堀留ほりどめ穀物こくもつ問屋で、諸藩のお金御用も勤め苗字めうじ帶刀たいたうまで許されて居る、大川屋孫三郎が、全然新しく建てて寄進することになり、材木まで用意して
けれど、近頃、韓猛かんもうというものが奉行となって、各地から穀物こくもつ、糧米なんどおびただしく寄せてきました。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
穀物こくもつや野菜や牛や馬を買いに来る商人の外は、めったに人がよそから来たことのない、へんぴな村なんです。それなのに、ひょっこり子供が一人出て来たのです。
天狗笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ただ少なくともこれを薬品として貢進こうしんせしめた『延喜式』の頃には、ツスまたはツシタマの名をもって世に知られ、数珠とは関係がなく、むしろ穀物こくもつつぶなどという言葉と
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
卯平うへい時々とき/″\そとては豆腐とうふきつして自分じぶんぜんはしらぬことはあるのであつたが、それでも勘次かんじは三にんのみが家族かぞくであつたときよりも穀物こくもつ減少げんせうするりやうえてたことをたちまちにめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たづぬるに武州埼玉郡さいたまごほり幸手宿さつてじゆく豪富がうふの聞え高き穀物こくもつ問屋とんやにて穀屋こくや平兵衞と言者あり家内三十餘人のくらしなるが此平兵衞は正直しやうぢき律儀りちぎ生質うまれつきにて情深なさけぶかき者なれば人をあはれたすくることの多きゆゑ人みな其徳そのとく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
広々ひろびろとした、田園でんえんのぞみ、豊穣ほうじょう穀物こくもつあいだはたら男女だんじょれを想像そうぞうし、嬉々ききとして、牛車ぎゅうしゃや、うまあと子供こどもらの姿すがたえがいたのであります。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
つまり、中にはりっぱな生活をしているものもあって、そういうカラスたちは、穀物こくもつとか、虫とか、死んだ動物とかいうようなものだけをたべているのです。
問題の土藏は小さい方の雜用藏で、そこには穀物こくもつや荒荷や、粗末な道具類しか入つてをらず、こんな場所に八千兩の大金が隱されてゐやうとは、全く思ひも寄らぬことでした。
てまえが聞き入れた事では、伊丹城の重臣の二、三が結託けったくして織田家のきびしい監視かんしの眼をくぐり、沢山な糧米や穀物こくもつを闇売りいたしたのが、安土へ知れたのが、もとかと思われまする
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人しゆじんからあたへられた穀物こくもつかれの一あたゝめた。かれ近來きんらいにないこころ餘裕よゆうかんじた。しかしさういふわづかかれさいはひした事柄ことがらでもいくらか他人たにん嫉妬しつとまねいた。百姓ひやくしやうにも悶躁もがいてものいくらもある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鳥渡ちよつと申上候昨日は御馳走ちそうあづかかたじけなく奉存候然者しからば先日御相談致し候穀物こくもつの儀江戸表へ相廻あひまはし申候明後日は關宿せきやど庄右衞門殿方へ穀代金こくだいきん勘定かんぢやうに參り申候粕壁かすかべの代金八十兩也大豆だいづ爲替かはせに仕つり候只今たゞいま御受取可被下候まづは右の段申上度如此かくのごとく御座候以上
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いわれば、きんぎんどうてつなどがひかっている。野原のはらにははなみだれ、や、はたけにはしぜんと穀物こくもつしげっている。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりはたけは、だいぶはなれていました。けれど毎年まいねん穀物こくもつは、ほとんどおなじようによくできたのであります。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、こうした野菜やさいや、穀物こくもつというものは、かならずしも勤勉きんべん土地とちにばかりよるものでありません。
自分で困った百姓 (新字新仮名) / 小川未明(著)