煙突えんとつ)” の例文
あおい、うつくしいそらしたに、くろけむりがる、煙突えんとつ幾本いくほんった工場こうじょうがありました。その工場こうじょうなかでは、あめチョコを製造せいぞうしていました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
コック部屋の裏には煙突えんとつが一本。そこにはまた労働者が二人せっせとシャベルを動かしている。カンテラを一つともしたまま。……
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の眼は、煉瓦壁の上をスルスルってカフェ・ドラゴンの屋根に登っていった。すると其処そこに、大きな煉瓦積の煙突えんとつがあるのだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしぢやない!おまへだ!——でもわたしぢやない、甚公じんこうりてくんだ——さァ甚公じんこう旦那だんなつたよ、おまへ煙突えんとつりてけッて!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
機関車きかんしゃの下からは、力のないげがげ出して行き、ほそ長いおかしな形の煙突えんとつからは青いけむりが、ほんの少うし立ちました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
工学博士バクスターは、ほらの壁がさまでかたくないのを見て、そこをうちぬいてかまどの上に煙突えんとつをつけたので、モコウは非常に喜んだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ただ、河口にならんだ蒸汽船の林立する煙突えんとつから、けむりが、濛々もうもうと、夕焼け空を暗くしていたのを、なんとなくおぼえています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
まだ雲のやうにうすかつたが次第に光輝を増し、半ば樹の間にかくれて、僅かな煙突えんとつから青い煙を流してゐるヘイの上を照した。
五、 屋外おくがいおいては屋根瓦やねがはらかべ墜落ついらいあるひ石垣いしがき煉瓦塀れんがべい煙突えんとつとう倒潰とうかいきたおそれある區域くいきからとほざかること。とく石燈籠いしどうろう近寄ちかよらざること。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
世界中の煙突えんとつと云う煙突をこゝに集めて煤煙の限りなくく様に、眼を驚かす雲の大行軍だいこうぐん音響おとを聞かぬが不思議である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
熊谷の町はやがてそのかわら屋根や煙突えんとつや白壁造りの家などを広い野の末にあらわして来る。熊谷は行田とは比較にならぬほどにぎやかな町であった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
それもそのはず、森やみどりのおかのかわりに、地平線に見えるものといえば、ただ灰色の煙突えんとつばかりなのですからね。
そとには誰もいない。わたしが通っても、戸が一つ開くでもない。処々の煙突えんとつが煙を吐いている。ほかの煙突はたぶん室内に煙を吐き込んでいるのだろう。
川の向こうには何かの工場の長いへいがつづいていた。その工場の煙突えんとつとすれすれに、巨大な赤い月が、彼の足並みと調子をあわせて、ゆっくりと移動していた。
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大川おほかははうへそのぱなに、お湯屋ゆや煙突えんとつえませう、ういたして、あれが、きりもやのふかよるは、ひとをおびえさせたセメント會社ぐわいしや大煙突だいえんとつだからおどろきますな。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汽車が停ったから、外を見ると赤い煉瓦れんがの大きな煙突えんとつがあって、ここも工場町と見える。このあたりで大きな煙突のあるのは十中八九砂糖会社の工場なのである。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
むこうの汽車はすぐ近くになりました。まっくろなすがた、けむりをはいてる煙突えんとつ、ぎらぎら光ってるヘッドライト……車輪しゃりんのひびきまできこえてきます。ぶつかったらさいごです。
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あら、へんなの。だってわたし、『草の実』の中の綴方つづりかたを、感心して、うちの組に読んで聞かしたりしたわ。『麦刈むぎかり』だの、『醤油屋しょうゆや煙突えんとつ』なんていうの、うまかった」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
そのつぎには、ガンたちは、ヴェッテルンの岸べにある、有名ゆうめいなマッチ工場こうじょうの上を飛びました。とりでのように大きな工場で、たくさんの煙突えんとつが、空高くきでていました。
秋草には束髪そくはつの美人を聯想すなど考えながらこゝを出でたり。腹痛ようやく止む。かねふち紡績ぼうせき煙突えんとつ草後にそびえ、右に白きは大学のボートハウスなるべし、端艇ボートを乗り出す者二、三。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は骨つきの方の鰺をしゃぶりながら風呂屋ふろや煙突えんとつを見ていた。「どんなに叱られていたか」何と云う乱暴な聞き方であろう、私は背筋が熱くなるような思いをえて、与一の顔を見上げた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
灼熱しゃくねつした塵埃じんあいの空に幾百いくひゃく筋もあかただれ込んでいる煙突えんとつけむり
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「こわれ煙突えんとつまでとっついてるじゃないかいな」
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
おや ストーブの煙突えんとつあなから何かはいつてきたわ
ああ霧雨きりさめなかに、煙突えんとつの林……
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
煙突えんとつけむりうすくも空にまよへり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
煙突えんとつからうすけぶりがたなびき
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たくさんの煙突えんとつから、くろけむりがっていて、どれがむかし自分じぶんたちのあめチョコが製造せいぞうされた工場こうじょうであったかよくわかりませんでした。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
××の鎮海湾ちんかいわん碇泊ていはくしたのち煙突えんとつ掃除そうじにはいった機関兵は偶然この下士を発見した。彼は煙突の中に垂れた一すじのくさり縊死いししていた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
片足かたあし煙突えんとつうへしました、『どんなことがあつてもうこれがとまりだらう、これでうなるのかしら?』とつぶやきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「よろしい。ノートは大へんによく出来ている。そんなら問題を答えなさい。煙突えんとつから出るけむりには何種類あるか。」
例えば、芝浦しばうら埋立地うめたてちに、鉄筋コンクリートで出来た背の高い煙突えんとつがあったが、そこからは、一度も煙が出たことがないのを、附近の人は知っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
石垣いしがき煉瓦塀れんがべい煙突えんとつなどの倒潰物とうかいぶつ致命傷ちめいしようあたへることもあるからである。また家屋かおく接近せつきんしてゐては、屋根瓦やねがはらかべ崩壞物ほうかいぶつたれることもあるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それから、お前、帆立貝の猿股さるまた穿いた象の脚、剃刀かみそり入れ、元禄袖、模範煙突えんとつ羽根箒はねぼうき、これは棕櫚しゅろの木、失敬。
眼下に横たわっている大都会、いらかが甍に続いて、煙突えんとつからは黒いすさまじいけむりがあがっているのが見える。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
煉瓦造れんがづくりなんぞ建って開けたようだけれど、大きな樹がなくなって、山がすぐ露出むきだしに見えるから、かえって田舎いなかになった気がする、富士の裾野すその煙突えんとつがあるように。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに、高い煙突えんとつがそびえているのですが、その煙突の鉄ばしごを、金色の怪物がよじ登っているのです。しかし、夜ふけのことですから、まだ、それに、気がつきません。
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けれども、かまどと煙突えんとつは、とても大きくて、これより大きいのは見たことがないとさえ思われるくらいでした。入口の戸は、かまどのそばの、破風はふのある壁についていました。
大きな町の煙突えんとつは、まだどれもけむりをはいていませんでした。それでもわたしが見ていたのは、その煙突だったのです。と、とつぜん、その煙突の一つから、小さい頭が出てきました。
線路せんろわきにぽつりぽつりついてる電燈でんとうの光が、とおくやみにまぎれて、レールもみわけのつかないそのさきの方に、大きな眼玉めだまのようなヘッドライトの光をかがやかし、煙突えんとつからけむりをはいて
ばかな汽車 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「おかげさまで、このごろは、毎日まいにちおもしろいめをしています。ほんとうに、わたしは、しあわせでございます。」と、煙突えんとつこたえました。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういっているとき、とつぜん樽に小さい煙突えんとつみたいなものがはえた。と思ったら、にわかにどろどろとあやしい鳴りものがし、ぴかぴかと電光が光った。
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
船蟲ふなむしむらがつて往來わうらいけまはるのも、工場こうぢやう煙突えんとつけむりはるかにえるのも、洲崎すさきかよくるまおとがかたまつてひゞくのも、二日ふつかおき三日みつかきに思出おもひだしたやうに巡査じゆんさはひるのも
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひろしつならば、其中央部そのちゆうおうぶ、もしくは煙突えんとつてる反對はんたいがはなど、やゝそれにちか條件じようけんであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
あいちやんはいくらもあるかないうちに、三月兎ぐわつうさぎいへえるところました、それはみゝのやうな格好かくかうをした煙突えんとつもあれば、毛皮葺けがはぶきの屋根やねまである整然ちやんとしたうちちがひありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
カアキイ色に塗つた煙突えんとつ。電車の通らない線路のび。屋上をくじやう庭園にはれてゐる猿。……
都会で (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
窓ガラスがきしむ。暖炉だんろ煙突えんとつが音をたてる。姉のエルネスチイヌまでが金切声かなきりごえをしぼる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
栗の木なんて、まるで煙突えんとつのようなものでした。十間置き位に、小さな電燈がついて、小さな小さなはしご段がまわりのかべにそって、どこまでも上の方に、のぼって行くのでした。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
煙突えんとつからは、けむりものぼってはいませんし、まどからは、あかりも、もれておりません。家の中には、だれもいないようにみえます。ニールスは、この家を見たとき、こう思いました。
煙突えんとつは、いつもは、だまって、陰気いんきかおをしてふさいでいたのですが、このときばかりは、なんとなく、うれしそうにはしゃいでいました。
煙突と柳 (新字新仮名) / 小川未明(著)