無益むえき)” の例文
このとほりに器械觀測きかいかんそく結果けつか體驗たいけん結果けつかとは最初さいしよから一致いつちがたいものであるけれども、それを比較ひかくしてみることは無益むえきわざではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
内実はくまでも鎖攘主義さじょうしゅぎにして、ひたすら外人をとおざけんとしたるその一例をいえば、品川しながわ無益むえき砲台ほうだいなどきずきたるその上に
さもなければ、わが人類対海底超人の無益むえきな争闘が起こって、ついには有史上ゆうしじょう最大の悲劇を生むであろうことを、あえて警告したい。——
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今茲に喋々てふ/\する事殊に無益むえきべんたれど前にもすでのべたるが如く此小西屋の裁判は忠相ぬし最初さいしよさばきにして是より漸次しだいに其名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今日こんにちこれ復興ふくこうするをべし、而してその復興ふくこうはうたるや、安楽椅子あんらくいすかゝり、或は柔軟じうなんなる膝褥しつぢよくうへひざまづ如何程いかほど祈祷きたう叫号きうごうするも無益むえきなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
かれらからいろいろのはなしくだけでも無益むえきではないであろうから、正月しょうがつには、かれらをまねいて、ひとつ盛大せいだい宴会えんかいひらいて、みようとおもう……。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なるほど、これは拙者せっしゃがこのへんに暗いため、無益むえき遠路とおみちにつかれていたかも知れぬ。しかし、この激流を、馬で乗っきる場所があろうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるにわたくし苦心くしんまつた無益むえきであつた。第一端艇だいいちたんてい波上はじやううかぶやなや、たちま數百すうひやくひとは、雪崩なだれごと其處そこくづれかゝつた。
しかるに今その敵に敵するは、無益むえきなり、無謀むぼうなり、国家の損亡そんもうなりとて、もっぱら平和無事に誘導ゆうどうしたるその士人しじんひきいて、一朝いっちょう敵国外患がいかんの至るに当り
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし第一週の辛抱は無益むえきでなかった。新太郎君は自らとがめるところのない生活の楽しさを解し初めていた。善い努力は善い方への傾きを強くする。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
で、かれももう思慮かんがえることの無益むえきなのをさとり、すっかり失望しつぼうと、恐怖きょうふとのふちしずんでしまったのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「もうよかろう、それ位ありゃ、さかなにゃ十分じゃ、いいかげんに、無益むえき殺生せっしょうはやめようじゃないか」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
はう心配しんぱいして電報でんぱうまでけたのであるから其時そのとき返電へんでんをしてもらへば無益むえき心配しんぱいけつしてしません。一寸ちよつとしたことであるが日本にほん婦女子ふぢよしには往々わう/\斯樣かやう等閑なをざりおほいのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
何一ツ入れるべき隠処かくしどころもありません。紙一枚入っておりませんですからあのアンジアンの夜襲も無駄、レオナールの殺害も無益むえきせがれの捕縛も無益むだ、私の努力のすべても無益むだになってしまいました
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
おな道理だうりで、さかる/\鈴鹿すゞかくもる=といひ、あはせりたや足袋たびへて=ととなへる場合ばあひには、いづれもつかれやすめるのである、無益むえきなものおもひをすのである、むし苦勞くらうまぎらさうとするのである
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
無益むえき予感よかんに似たその光が
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
無益むえきよくが、かえって人間にんげん不幸ふこうにするのだ。そして、欲深よくふかになったものは、もう二と、まれたときのような、うつくしい気持きもちにはなれないのだ。
船でついた町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そういう意味で、今、ここの扇屋の牡丹ぼたん畑を去るにつけても、彼は無益むえきな日を費やしたとは少しも思わなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしおもはず一息ひといきついた、『矢張やはり無益むえき心配しんぱいであつたか』とすこしくむねでおろす、其時そのときわたくしはふと心付こゝろついたよ
真実しんじつ外国干渉のうれいあるを恐れてかかる処置しょちに及びたりとすれば、ひとみずから架空かくう想像そうぞうたくましうしてこれがために無益むえき挙動きょどうを演じたるものというの外なけれども
けだ勝氏かつしはい所見しょけんは内乱の戦争を以て無上の災害さいがい無益むえき労費ろうひと認め、味方に勝算しょうさんなき限りはすみやかして速にことおさむるにかずとの数理を信じたるものより外ならず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たすけんといふ心底しんていうれしけれども無益むえきの事なり我は其外そのほかにもとがおほければとてものがれぬなるにより尋常じんじやうとがかうむらんと申にぞ喜八は差俯向さしうつむいことばなし大岡殿暫時兩人りやうにんことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、かれももう思慮かんがへること無益むえきなのをさとり、全然すつかり失望しつばうと、恐怖きようふとのふちしづんでしまつたのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
宗派的しふはてき交渉かうしやうの成りしときにあらざるなり、是れ神学的しんがくてき一致いつちの来りし時に非ざるなり、真正の一致いつちは吾人各々がその奉ずる所の主義を其儘実行する時にあり、約定上やくでうじやう一致いつち無益むえきなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
坂は照る照る鈴鹿すずかくもる=といい、あわせりたや足袋たび添えて=と唱える場合には、いずれもつかれを休めるのである、無益むえきなものおもいを消すのである、むしろ苦労をまぎらそうとするのである、うささんじよう
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無益むえき殺生せっしょうを致しましたよ」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
維新いしんの頃より今日に至るまで、諸藩の有様は現に今人こんじん目撃もくげきするところにして、これをしるすはほとんど無益むえきなるにたれども、光陰こういん矢のごとく、今より五十年を過ぎ
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
不敵な竹童ちくどうつらがまえを、じッとみつめていた呂宋兵衛るそんべえは、ことばの糺問きゅうもん無益むえきと知って、口をつぐみ、黙然もくねんと右手の人さし指をむけ、天井てんじょうから竹童の頭の上へ線をかいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴方あなた如何どうしたらからうと有仰おつしやるが。貴方あなた位置ゐちくするのには、こゝから逃出にげだす一ぱうです。しかれは殘念ざんねんながら無益むえきするので、貴方あなた到底たうていとらへられずにはらんです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『ひ、ひ、卑怯者ひけふもの!。』とわたくし躍起やつきになつた、此處こゝには春枝夫人はるえふじんごと殊勝けなげなる女性によせうもあるに、かれ船長せんちやう醜態しうたい何事なにごとぞとおもふと、もうだまつてはられぬ、もとより無益むえきわざではあるが
しよを山上にけながら眼下がんか群住ぐんぢうするあはれなる数万の異教徒ゐけうとめに祈願きぐわんめるも無益むえきなり、教会けうくわい復興ふくこう方策はうさくとは教導師けうだうしみづからつるにあり、家族かぞく安楽あんらく犠牲ぎせいきやうするにあり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
聞居きゝゐたる者あつて御領主へとくに申上たれば此上ちんずるとも無益むえきなりと申しければ傳吉は熟々つく/″\と心の中に思ふ樣罪なくして無實の罪におちいる我が身にまつはる災厄まがつみとは言ひながら我朝わがてう神國しんこくなるに神も非禮ひれい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たないか、こんなところ長居ながゐ無益むえきだ。うした。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が——無益むえきな問答をしているあいだに、呂宋兵衛るそんべえは、じゅうぶんに幻術げんじゅつのしたくをしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貴方あなたはどうしたらよかろうと有仰おっしゃるが。貴方あなた位置いちをよくするのには、ここから逃出にげだす一ぽうです。しかしそれは残念ざんねんながら無益むえきするので、貴方あなた到底とうていとらえられずにはおらんです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
故に上士の常に心を関するところは、尊卑そんぴ階級のことに在り。この一事においては、往々おうおう事情に適せずして有害ゆうがい無益むえきなるものあり。たとえば藩政の改革とて、藩士一般に倹約けんやくを命ずることあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)