御目おめ)” の例文
「あゝ、山国やまぐに門附かどづけ芸人、誇れば、魔法つかひと言ひたいが、いかな、までの事もない。昨日きのうから御目おめに掛けた、あれは手品ぢや。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おやそうさん、少時しばらく御目おめゝらないうちに、大變たいへん御老おふけなすつたこと」といふ一句いつくであつた。御米およね其折そのをりはじめて叔父をぢ夫婦ふうふ紹介せうかいされた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
立ち退のき候て何國のはてにても永く夫婦と相成申したくと夫のみ此世の願ひといのり居り※どうぞ/\御目おめもじのうへ山々やま/\御ものがたり申し上ぐべく候
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とてりての御喜およろこさてはゝまゐらせたるきみなりしか御目おめにかゝりしうれしさにへておちぶれしはづかしと打泣うちなきしに榮枯えいこときなるものを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『あゝ、柳川やながはさん、わたくしは、貴方あなた此世このよ御目おめからうとは——。』とつたまゝ、そのうるはしきかほわたくし身邊しんぺん見廻みまはした。
塾の先進生㹅掛そうがかりにて運動する中に、或日あるひ私は岩倉いわくら公の家に参り、初めて推参なれども御目おめに掛りたいと申込んで公に面会、色々塾の事情を話して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それとなく彼をここへ呼ぶ訳には行きませんかしら、そうすれば、僕はきっと真相をつき止めて御目おめにかけますがね
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
実は少々御示教にあずかりたき儀有之これあり昨夜はいつもの処にて御目おめに掛れる事と存じをり候処御病臥びょうがの由面叙めんじょの便を失し遺憾に存じ候まゝ酒間乱筆を顧みずこの手紙差上申さしあげもうし候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
牧野伯とは、思わぬ機縁で、今度の戦争の初め頃から、時々御目おめにかかっていた。
島津斉彬公 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いゝえ、おはづかしい、御目おめけるやうなのではござりません。それに、夜店よみせひましたので、お新造樣しんぞさまれましてはきたなうござります。」
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかし鎌倉の宗演和尚に参して父母未生以前ふもみしょういぜん本来の面目はなんだと聞かれてがんと参ったぎりまだ本来の面目に御目おめかかった事のない門外漢である。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
猛獸まうじう毒蛇等どくじやとう危害きがいきわめておほければ、けつして足踏あしぶみしたまふな、大佐たいさ夕刻ゆふこくかへつて、ふたゝ御目おめにかゝるし。
如何いかにつらからぬことひさぶりにて御目おめにかゝりし我身わがみねがれ一なりかなへさせたまはゞうれしかるべきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
猫も杓子しゃくしも政府の辺に群れあつまって、以前の賊徒今の官員衆に謁見、れは初めて御目おめに掛るともわれまい、兼て御存じの日本臣民で御座ござると云うような調子で、君子は既往を語らず
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
只赤川殿に御目おめに懸り主人越前守の口上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かごとりおなじこと風呂屋ふろやくも稽古けいこごとも一人ひとりあるきゆるされねば御目おめにかゝるをりもなくふみあげたけれど御住所おところたれひもならずこゝろにばかりないないりましたを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唯今ただいま御指図おさしずの通り早々帰国しますが、御隠居様に御伝言は御在ございませんか、いずれ帰れば御目おめに掛ります、又何か御品おしながあれば何でももって帰りますといって、ず別れて翌朝よくあさいって見ると
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しらせ申上候も不孝とは存じ候へども始終しじうの所私しの命はとても御座なき事とぞんじ候へば最早此世にての御目おめもじは出來がたく先立不孝は御ゆるし下され度候尤も大殿樣は大惡人ながら御氣象きしやう甚だ甲斐なき御方に御座候處御用人安間平左衞門殿と申人は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奇麗きれいはなでしたけれどもゝうしをれて仕舞しまひました、貴君あなたにはあれから以來いらい御目おめにかゝらぬでは御座ござんせぬか、何故なぜひにくださらないの、何故なぜかへつてくださらぬの
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御覧ぜよ、奥方の御目おめには我れを憎しみ、殿をばあざけりの色の浮かび給ひしを
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御覽ごらんぜよ奧方おくがた御目おめにはれをにくしみ殿とのをばあざけりのいろかびたまひしを。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でつ漸々やう/\東京こゝへはきしもの當處あてどなければ御行衛おゆくゑさらるよしなく樣々さま/″\艱難かんなん御目おめにかゝるをりめられぐさにとつはこゝろたのしみつゝいやしい仕業しわざきよおこなひさへがれずばと都乙女みやこおとめにしきなか木綿衣類もめんぎもの管笠すげがさ脚袢きやはん
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)