麦門冬りゅうのひげ)” の例文
そろそろ家並の下を街灯ともしが通る頃になると、漸く門内の麦門冬りゅうのひげを踏み、小砂利を蹴散らしながら駆け込んで来たが、その折門前では、節句目当ての浮絵からくりらしい話し声——。
絶景万国博覧会 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
麦門冬りゅうのひげふちを取った門内の小径こみちを中にして片側には梅、栗、柿、なつめなどの果樹が欝然うつぜん生茂おいしげり、片側には孟宗竹もうそうちくが林をなしている間から、そのたけのこいきおいよく伸びて真青まっさおな若竹になりかけ
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
絶えず体に波を打たせていた蛇の下半身しもはんしんが、ずばたりと麦門冬りゅうのひげの植えてある雨垂落の上に落ちた。続いて上半身かみはんしんが這っていた窓の鴨居かもいの上をはずれて、首を籠に挿し込んだままぶらりと下がった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)