鴉片あへん)” の例文
「したのですが、失敗しました。わたしは鴉片あへんを二度飲みました。しかも二度目には初の量の三倍を飲みましたが、それでも足りなかつたと見えます。」
(新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
もう一人の支那人、——鴉片あへんの中毒にかかっているらしい、鉛色の皮膚ひふをした男は、少しもひるまずに返答した。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夫人を美酒びしゅに酔わせるか、鴉片あへんをつめた水管の味に正体を失わせるか、それとも夫人の安心をかちえたエクスタシーの直後の陶酔境とうすいきょうじょうじて、堕胎手術を加えようか
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それ等の恐しい空想は鴉片あへんの夢かとばかり、云ひ知れぬ麻痺の快感を肉心にくしんに伝へるのであつた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
真珠に盛りし鴉片あへんさえ
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ヴェルレエン、ラムボオ、ヴオドレエル、——それ等の詩人は当時の僕には偶像ぐうぞう以上の偶像だった。が、彼にはハッシッシュや鴉片あへんの製造者にほかならなかった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「なーに、これはあの劇薬げきやくを煙草にませて喫う方法なのだよ。鴉片あへん中毒者はモヒ剤だけを吸うが、われわれの場合は、ほんの僅かのモヒ剤を煙草にぜて吸うのだよ」
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
故ニソノ論ズル所すこぶる時勢ニ切ナリ。しこうシテ議武ノ一篇最作者ノ意ヲ注グ所。ケダシ道光壬寅鴉片あへんノ変魏源ヅカラソノ際ニ遭遇シ清国軍政ノ得失、英夷侵入ノ情状コレヲ耳目ノ及ブ所ニ得タリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
見ると小犬のいた所には、横になった支那人が一人、四角な枕へひじをのせながら、悠々と鴉片あへんくゆらせている! 迫った額、長い睫毛まつげ、それから左の目尻めじり黒子ほくろ。——すべてが金に違いなかった。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奴隷の鴉片あへん。癩病者の牝犬めいぬ