鳴呼ああ)” の例文
破滅か、然らずんば——鳴呼ああ、然し、破滅以外の何物が有り得るか! 何物が有り得ても、恐らく満ち足りることが有り得ないのだ。
青春論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
鳴呼ああ、私たち二人は何という相違だろう。それは天使と悪魔とが一つのへやの中に向かいあっているようなものだ。
秘密 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
そこへ天覧という大きなことがかぶさって来ては! そこへまた予感というあやしいことが湧上わきあがっては! 鳴呼ああ、若崎が苦しむのも無理は無い。と思った。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ヤヌッセンは、氷島アイスランドの地底の大海に「喜ばしき海ラエチス」と命名した。われわれは、嗟嘆さたんの声をそのまま、この海を「Ай!(鳴呼ああ!)」と名づけることにした。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
……鳴呼ああ、彼は何かにたぶらかされたようだった。何物にも同じような不満ばかりだった。ある楽匠にたいしては、断腸の思いをした。愛する友を失ったようなものだった。
安心しきっていた一行は、急に壁につきあたりでもしたかのように、立ちどまりました。私もおくせに駈けつけてみましたが、鳴呼ああこれは一体どうしたというのでしょう。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その男が流しの殺人犯人だとも考えられない。鳴呼ああ、自分の頭脳は全く馬鹿になってしまった
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)