鱗葺こけらぶ)” の例文
そこは三棟みむねの高い鱗葺こけらぶきの屋根の見える山村氏の代官屋敷を中心にして、大小三、四十の武家屋敷より成る一区域のうちである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こけの生えた鱗葺こけらぶきの屋根、腐った土台、傾いた柱、汚れた板目はめ、干してある襤褸ぼろ襁褓おしめや、並べてある駄菓子や荒物あらものなど、陰鬱いんうつ小家こいえは不規則に限りもなく引きつづいて
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こけの生えた鱗葺こけらぶきの屋根やねくさつた土台、傾いた柱、よごれた板目はめしてある襤褸ぼろ襁褓おしめや、ならべてある駄菓子だぐわし荒物あらものなど、陰鬱いんうつ小家こいへは不規則に限りもなく引きつゞいて
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ここが三むねの高い鱗葺こけらぶきの建物の跡か、そこが広間や書院の跡かと歩き回った。その足で彼は大手橋を渡った。橋の上から見うる木曾川の早い流れ、光る瀬、その河底かわぞこの石までが妙に彼の目に映った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)