鰥寡かんか)” の例文
鰥寡かんか孤独、実に頼るところなき者へは救助ももっともなれども、五升の御救米おすくいまいを貰うて三升は酒にして飲む者なきにあらず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
抑々そもそも男女室に居るは人の大倫であり、鰥寡かんか孤独は四海の窮民である。天下に窮民なく、人々家庭の楽あるは太平の恵沢である。家に良妻ある程幸福はない。
鰥寡かんか、孤独、貧困の者は広く賑恤しんじゅつするぞ、八十歳以上の高齢者へはそれぞれ褒美ほうびをつかわすぞと言われても
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは領内の窮民きゅうみんまたは鰥寡かんか孤独の者で、その身がなにかの痼疾こしつあるひは異病いびょうにかゝつて、容易に平癒へいゆの見込みの立たないものは、一々いちいち申出ろといふのであつた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
物産を蕃殖はんしょくせしめ、有無うむを相通ぜしめ、水道、溝渠こうきょ、貯蓄等の民政を振作し、いて鰥寡かんか孤独こどく愛恤あいじゅつする等のおのずから現時の国家社会制を実践したるもの一にして足らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
鰥寡かんか孤独の人間で親族みよりもなければ妻もない。毎夜夜半まで官舎の古びた机に倚って孤影凝然と犯罪学クリノロジイの研究に従っている、いわば検察のためにこの世に生れて来たような人物。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
また従来最寄りの神社参詣を宛て込み、果物、駄菓子、すし、茶を売り、鰥寡かんか貧弱の生活を助け、祭祀に行商して自他に利益し、また旗、のぼり、幕、衣裳を染めて租税を払いし者多し。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
総督の進発については、沿道にある八十歳以上の老年、および鰥寡かんか、孤独、貧困の民どもは広く賑恤しんじゅつする。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)