馬糧小屋まぐさごや)” の例文
「心得た。おれが、馬糧小屋まぐさごやをはじめ諸所へ火をつけて廻るから、おめえは、謀叛人むほんにんだ、裏切者だ、と呶鳴ってまわれ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お長屋の屋根やねむこうに、まだ黄色く立ちのぼっている馬糧小屋まぐさごや余煙よえんをながめて、ひとりごとをつぶやいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに馬糧小屋まぐさごやの火は屋根やねから空へもえけて、あかあかとした反映はんえい躑躅つつじさきたい建物たてものらした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはちょうど、たち北側きたがわにつづく馬廻うままわり役の長屋ながやの近くである。そこにっている屋根やねの高い馬糧小屋まぐさごやかられたせいろうのように白いけむりがスーとめぐっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬糧小屋まぐさごやの馬糧の中へ、二人は仰向けになって転がった。手と手だけはつないでいた。体が納豆なっとうのようにれて来ると、城太郎は物狂わしく小茶ちゃんの指へいきなり噛みついた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男と女の持ち合う感動とはおよそどんなものかということは、彼自身も、柳生の庄の旅籠屋はたごやの小茶ちゃんと、馬糧小屋まぐさごやわらの中でなんというわけもわからずに悶掻もがき合った体験がある。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石室いしむろの中は八畳ぐらいな広さで、横に黒布のとばりを垂れ、帳の奥は二坪ばかりな板敷で、ヨハンが八年間使い馴らした椅子、食器、寝具などのほかに、馬糧小屋まぐさごやのようなワラがいっぱい敷いてある。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)