颷風ひょうふう)” の例文
……深淵にして神! 深潭しんたんにして神! 存在の火炉! 生命の颷風ひょうふう! 生の激越のための——目的も制軛せいやくも理由もなき——生の狂乱!
燕府えんぷこぞって殺気陰森いんしんたるに際し、天もまた応ぜるか、時そも至れるか、颷風ひょうふう暴雨卒然としておおいに起りぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
颷風ひょうふうは吹きつのる。あらゆる水沫は彼の上よりかぶさる。彼は目をあげるが、見ゆるものとては鉛色の雲ばかり。苦痛にもだえながら彼は、海の広漠たる狂暴を目撃する。
藤十郎の心にそうした、物狂わしい颷風ひょうふうが起っていようとは、夢にも気付かないらしいおかじは押入れから白絖しろぬめ夜着よぎを取出すと、藤十郎の背後に廻りながら、ふうわりと着せかけた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
星屑ほしくず降るような宵だったが、忽ちあしのざわめき、波を捲く颷風ひょうふうだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは進行を止めて雲につかまりながら、両のこぶし深淵しんえんの上方にしがみつき、そしてまた全速力で空間中に突進する。颷風ひょうふうは怒号する。
酔い狂う颷風ひょうふうであった。騒然たる武力であった。群集の熱を歌う人々の幻惑せる叙事詩であった。未来の都市を鍛え出す
彼らがようやくぬけ出してきた闇夜やみよを騒がしていた颷風ひょうふう、彼らがいかに否認してもなお世界を脅かしつづけている颷風、それを彼らは忘れたがっていた。
肉体界もしくは精神界において、創造することは、身体の牢獄ろうごくから脱することであり、生命の颷風ひょうふう中に飛び込むことであり、「存在する者」となることである。