頭上ずじょう)” の例文
斯う思いながら縁から見て居ると、頭上ずじょうの日はカン/\照りながら、西の方から涼しいと云うよりむしろつめたい気が吻々ふつふつと吹っかけて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こういいながら胴田貫、おもむろにッさきを持ちあげて、ヌッと竹童のひとみへ直線にきたと思うと、パッと風を切って卜斎の頭上ずじょうにふりかぶられた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭上ずじょうの騒動はいよいよ爛熟らんじゅくし、ポルトガル人の叱咜しったする声にまじって、帆柱の倒れる音や重いものを曳きまわす音、大鋸おおがで木を挽く音、手斧で打ち割る音
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
立ち尽していると頭上ずじょうで御祈祷鳥が鳴く、御岳山の御祈祷鳥は高野こうやの奥に鳴くという仏法僧。
ところが、玉太郎たちは、にわかにこの恐竜どもの姿を、頭上ずじょうあおぐようなことになった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
文明の趨勢と教化の均霑きんてんとよりきたる集合団体の努力を無視して、全部に与うべきはずの報酬を、いて個人の頭上ずじょうに落さんとするは、殆んど悪意ある取捨しゅしゃと一般の行為だからである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夜はけた。余は「うき草」の巻をけたまゝ、読むともなく、想うともなく、テェブルにもたれて居る。雨がぼと/\頭上ずじょうのトタンをたゝく。ランプが䗹々ともえる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見よ、錬鉄れんてつの禅杖が、かれの頭上ずじょうにふりかぶられて、いまにも疾風しっぷうをよぼうとしているのを!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やっと安息の場所をて、広縁ひろえんに風呂敷を敷き、手枕たまくらをして横になった。少しウト/\するかと思うと、直ぐ頭の上で何やらばさ/\と云う響がした。余は眼をいて頭上ずじょうやみを見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)