頬鬚ほほひげ)” の例文
濃い眉毛、黒い大きな頬鬚ほほひげ、ぎろりとした目、下半面がつき出た顔、そしてそれらの上に言葉に現わせない落ち着いた様子が漂っていた。
半白の頬鬚ほほひげを蓄へた主人役の伯爵が、胸間に幾つかの勲章を帯びて、路易ルイ十五世式の装ひをらした年上の伯爵夫人と一しよに、大様おほやうに客を迎へてゐた。
舞踏会 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
手を振りたいを練りつゝ篠田は静かに歩みを運びきたる、いちに見る職工の筒袖つつそで、古画に見る予言者の頬鬚ほほひげ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
黒餅こくもち立沢瀉たちおもだか黒紬くろつむぎの羽織着たるがかく言ひて示すところあるが如き微笑をもらせり。甘糟と呼れたるは、茶柳条ちやじま仙台平せんだいひらの袴を着けたる、この中にてひと頬鬚ほほひげいかめしきをたくはふる紳士なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と、大尉は伸びた頬鬚ほほひげをなでまわした。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)