頬冠ほほかむ)” の例文
ただ一片いっぺん布令だけの事であるから、俗士族は脇差わきざしを一本して頬冠ほほかむりをして颯々さっさつと芝居の矢来やらいやぶっ這入はいる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それで股引しり端折ぱしょり日和ひより下駄、古帽子や手拭の頬冠ほほかむり、太巻毛繻子の洋傘を杖にして、農閑の三、四月から続々上京、五人六人連れ立って都大路を練り歩く。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「私が振袖にすがりつくと、それをパッと脱ぎ捨てて、用意の絆纏はんてん頬冠ほほかむりをして外に飛び出しました。お乳と胸毛と——そんなものを皆んな見てしまったんですもの」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
これでは困ると思って色々とこの方法を改良し、近頃は笠の代りに鳥打帽をかぶせたり、古いタオルの頬冠ほほかむりをさせたりすると、人間の香りが強いので幾分か余計にこれを避けはばかるように見える。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)