革鞭かわむち)” の例文
杉の枯木のこちらに、男や女が七八人立ち並び、一人のたくましい男が諸肌もろはだぬぎになって、革鞭かわむちのような物で裸の女を打っていた。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今日もこれから家へ帰ったならあの特壹号とくいちごう革鞭かわむちで、ミチ子の真白い背中が血だらけになる迄ひっぱたいてやろうと思う。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その草地のまん中に、せいの低いおかしな形の男が、ひざを曲げて手に革鞭かわむちをもって、だまってこっちをみていたのです。
どんぐりと山猫 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
細い革鞭かわむちを持って、娘の方でも思いがけぬところへ現れた私の姿に、びっくりしているのです……手綱を絞られたその馬のまた、たくましく大きくて
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「見るからに、強情そうなつらがまえよ。きょうこそ肉をたたき破っても、口を割らせてくれるぞ」蔵人は、牢の外から宣言して、曲者を、縄目のまま、外へ出させた。馬を打つ革鞭かわむちを持って
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虹……まさにそれは、革鞭かわむちのような虹でした。ですが、犯人を気取ってみたり、久我鎮子の衒学的ペダンティックな仮面をけたりしている間は、それに遮られていて、あの虹を見ることが出来なかったのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこへ太子は階段を上って帰って来られたが、姉上に対する駐在官の無礼を見られると、いきなり手にせられた乗馬用の革鞭かわむちを奮って駐在官目蒐めがけて打ち降ろされた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
聞えるものは雪婆ゆきばんごのあちこち行ったり来たりして叫ぶ声、お互の革鞭かわむちの音、それからいまは雪の中をかけあるく九疋くひきの雪狼どもの息の音ばかり、そのなかから雪童子ゆきわらすはふと
水仙月の四日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
別当がこんどは、革鞭かわむちを二三べん、ひゅうぱちっ、ひゅう、ぱちっと鳴らしました。
どんぐりと山猫 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)