革袋かわぶくろ)” の例文
彼はすっかり隙間すきまのないほど身固みがためし、腰にはピストルの革袋かわぶくろを、肩からななめに、大きな鶴嘴つるはしを、そしてズックの雑袋ざつぶくろの中には三本の酒壜を忍ばせて
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
冷やッこい金物が、革袋かわぶくろの口からお蝶の指にさぐり出される。それは、辞書編纂じしょへんさんのため常に出入りするので二官が特に預かっている切支丹屋敷の土蔵のかぎ
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
躯に娘らしいまるみがあらわれるにつれ、自分の肉躰にくたいが汚辱されけがされ、腐ってゆく革袋かわぶくろのように思えた。そして男がうらやましく、男に生れてこなかった自分を憎悪した。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この古き革袋かわぶくろを今に生かして新しい酒を盛る営みのために、彫心鏤骨は生れ出たのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
彼が屋敷町の小路を、針はいらんか、京針はいらんか——とあきないして歩いていると、向うから、羽壺うつぼ革袋かわぶくろを脇に掛けて、二張ふたはり三張みはりの古弓を肩にになった男が、日吉よりはよくとおる声で
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)