隠亡おんぼう)” の例文
旧字:隱亡
「ねえ旦那、役署の隠亡おんぼうがしらは、何九叔かきゅうしゅくって男ですが、あいつはひどく、死人調べには眼がく男だと聞いてますが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軒は傾き、壁はくずれて、さながらに隠亡おんぼう小屋のような気味のわるい小屋でした。もちろん、ただの小屋ではない。
今日の内にも小塚原あたりに打捨うっちゃりになり、江戸お構いの女房の拾いでも遅くも夕方までには隠亡おんぼう小屋の煙りになろうという手筈——だったのが、それがどうだ!
それを見ると主膳は直ちに、こいつ墓掘りだ、隠亡おんぼう共だわい、と気取けどりました。隠亡が墓地へ墓穴ぼけつを掘りに来るのはあたりまえの看板だから、少しも恐るるには足りない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これ或いは山住の御坊おんぼう、すなわち俗に所謂隠亡おんぼうの徒ではなかろうかとも考えてみたのであったが、一方にそれを明らかに「山牛蒡」と書いてあってみれば、疑いもなくこれは山の護法で
隠亡おんぼうは棺を三等の穴に投げ込んで、合い鍵を渡し土を塗って火をつけた。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
隠亡おんぼうは、自分でも馴れた手付で、それの幾つかを拾った。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「僕の母は——お寺の隠亡おんぼうと知っているのだ。」
いまや舞台は、三幕目砂村隠亡おんぼう堀の場。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
傴僂せむし隠亡おんぼうが居る。
書けない探偵小説 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
徳川を倒して、第二の幕府を作るものは薩摩だと、あの隠亡おんぼうらまでが取沙汰とりざたしている。薩摩でなければ長州だと、相場がきまったようなことを、あいつらまで言っている。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところへ、部下の隠亡おんぼうが、三人でやって来た。あの後で、王婆は自分らを下にもかずもてなし、銀子ぎんす十五両を出して「仏の供養ですから、お三人で分けて下さい」と、いったという。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……と、いう実あ苦肉の策で、わが家に一時引き籠っていましたが、それから三日後、手下の隠亡おんぼうへ申しつけて、後日の証拠にこのおこつの一片を、こっそり盗ませておいたような次第。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)