随身ずいしん)” の例文
旧字:隨身
そこに白く咲いているのは何の花かという歌を口ずさんでいると、中将の源氏につけられた近衛このえ随身ずいしんが車の前にひざをかがめて言った。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
供奉ぐぶ随身ずいしんの騎者は、おびただしい。なんとも長い列である。御車をひく牛の、のろい歩調に、総ての足なみがつれて行く。
「父はおのれ一族の名をあげ、その方共に高名出世をさせとうてご随身ずいしん申したのではない、一家一族をささげて徳川のいしずえとなるためにお仕え申したのだぞ」
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『それや、謙譲けんじょうというよりは、虚偽に聞こえる。和殿に乗りこなせないはずはない。いや、おたがい、鳥羽院の随身ずいしんたり、武者所の侍ともある者がよ』
(——彼が平家に随身ずいしんしたのは、平家の栄華に随身したのである。節義を売ったものだ。さもしい武将ではある)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、お怒りのわけは、解りました。より先に、私が、楠木家に随身ずいしんして、なぜ武士の道をたがえたかのようなことをしたか、仔細しさいを申し上げましょう」
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉が中国探題たんだいとして、ここに臨んで後、織田に属し、自然秀吉に随身ずいしんして来た輩ではあるし、かつは、黒田官兵衛にとっても、家系の主筋にあたる人々。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、曹操に随身ずいしんしてしまったら、もう皇叔の居どころが分っても、お側へは行かれますまい。関将軍とておなじこと、その時はどうなさるおつもりですか」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁和寺にんなじの御幸も、あと十日ほどしかない。院の武者所むしゃどころは、その日のしたくに忙しかった。清盛は、こんど初めて、六位の布衣ほいじょせられて、御車の随身ずいしんを仰せつかった。
使いをもって、遠路、老体をわずらわしたが、実を申せば、江戸にある嫡子ちゃくし秀忠ひでただに、剣の良師を求めておる。早速であるが、徳川家に随身ずいしんの意志はないか。それが問いたいのじゃ。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われつらだましいに見どころがある。この小六に随身ずいしんする気があれば使うてやる」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このたびこそ、成政に随身ずいしんの者にとり、万死一生の戦いなるぞ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御勘気をうけて、追放されても、他家へ随身ずいしんの心も抱かずに」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そちが随身ずいしんのしるしに」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)