阿武隈あぶくま)” の例文
おしいかな、阿武隈あぶくま川の川筋は通らなかった。が、県道へかかって、しばらくすると、道の左右は、一様に青葉して、こずえが深く、枝が茂った。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川内せんだい』『那珂なか』『阿武隈あぶくま』——そんな五千トンぐらいの軽巡洋艦が、見はり役になって、紅玉島の近くまで出かけている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
阿武隈あぶくま河口以北の地はあるいは海運を主としたであろうが、伊達だて信夫しのぶ以南会津、白河等の地方にあっては、米も人もことごとく陸路まずこの地に至り
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お城下へもうひと息という阿武隈あぶくま川の岸近くで左右二つに道のわかれるところが厶りまするな、あの崖際がけぎわへさしかかって何心なく道を曲ろうと致しましたところ
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
那珂なか阿武隈あぶくま、近くは名取川に至るまで、大小いくつかの川を渡っては来ているけれども
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
阿武隈あぶくま川のええ
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
帰る際にその跡をつけた者があったが、山に入ると急に足早になり、たちまちにその影を見失った。小鼓こつづみ阿武隈あぶくまの川口であって、山は低いけれども峯は遠く連っている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
武隈という地名の起原は、一説には下を流るる川の名と同じくもと阿武隈あぶくまであったのが、阿の字脱落して読み方を誤るに至ったのだろうとあるが、あまりに文字に拘泥した説明である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その人形を奥郡ではオシラガミ、阿武隈あぶくま水域ではシンメサマというのである。
宮城県北部の登米とよま郡その他、岩手県の気仙けせん郡などもともに、センバコキと謂えば一般に櫛の歯式稲扱器、すなわち南隣の阿武隈あぶくま流域などで、前からカラハシと呼んでいたものを指したらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)