鋩子きっさき)” の例文
彼の鋩子きっさきが一寸さがれば一寸、二寸さがれば二寸、あたかも闇の中に二本の銀蛇がつながっているように、極く僅かずつ移って行く。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さつごとに、その鋩子きっさきから虹のように血をき、血は脳漿のうみそき、指のかけらを飛ばし、なま大根のように人間の腕を草むらへほうり出した。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでたまろう、二じょう白虹はっこう、パッと火花をちらしたかと思うと、燕作の鈍刀なまくらがパキンと折れて、こおりのごとき鋩子きっさき破片はへん、クルッ——と虚空こくうへまいあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新九郎は、真剣の鋩子きっさきより鋭く見えた竹杖の先に、思わずジリジリと追い詰められて、八双上段の大刀を、まったくやりどころなく歯を食いしばってしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、さすがにその計りがたい鋩子きっさきへ、吾から命を落しに来る浅慮あさはかな者もなく、やッ、おッ、のわめきばかりで、しばらくは七本の刀影がギラギラと相映じているのみだった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刃紋はもん朧夜ろうやの雲に似るみだれ、ほしの青さを吸って散らすかとばかりかがやかしい、鵜首作うくびづくりの鋩子きっさきに特徴のある太刀のすがたは——まず相州系そうしゅうけい新藤しんとう国光くにみつとみてまちがいはない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)