鋏刀はさみ)” の例文
此方こちらの小さな低い台には、鏡台があつて、その下に櫛や鋏刀はさみを入れた小箱が置いてあつた。午後の日影が高い窓から微かに線を成してさし込んで来てゐた。
浴室 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
青年が学者の真似をして、つまらない議論をアッチからも引き抜き、コッチからも引き抜いて、それを鋏刀はさみと糊とでくッつけたような論文を出すから読まないのです。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そのころは鋏刀はさみなどというものを皆隠して、お手ずから尼におなりになるようなことのないように女房たちが警戒申し上げていたから、そんなふうにお騒ぎをせずとも
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
現にかわやに入りて、職業用の鋏刀はさみもて自殺をくわだてし女囚をば妾もの当りに見て親しく知れりき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
私もお跡から參りまするとて日のうちには看護まもりの暇をうかゞひて驅け出すこと二度三度もあり、井戸には蓋を置き、きれ物とては鋏刀はさみ一挺目にかゝらぬやうとの心配りも、危きは病ひのさする業かも
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鋏刀はさみ持つ庭作り人きりそけて乏しくさける山茶花の花
長塚節歌集:1 上 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
行く春や葛西の男鋏刀はさみして躑躅を切りぬ居丈ばかりに
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
ゆく春や葛西かさいの男鋏刀はさみして躑躅つつじを切りぬ居丈ゐだけばかりに
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
私もお跡から参りまするとて日のうちには看護まもりの暇をうかがひて駆けいだすこと二度三度もあり、井戸にはふたを置き、きれ物とては鋏刀はさみちやう目にかからぬやうとの心配りも、あやふきは病ひのさする業かも
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鋏刀はさみあり、円座の上。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
鋏刀はさみを下さい
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)