鉄鉢てつばち)” の例文
旧字:鐵鉢
和尚はそれを捉えて弟子が捧げている鉄鉢てつばちに入れたあとで、又念じていると屏風のうしろから一尺ばかりの小蛇こへびが這いだして来た。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
払わせた槍を、咄嗟とっさ、そのまま、虎之助はほうり捨てた。——ひどい乱暴である。かぶと鉄鉢てつばちを砲弾のように向けて、彼の横っ腹へぶつけて行った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳥右さんはそこで、づだぶくろを首からさげて、鉄鉢てつばちをもつて、「それでは村の衆、しばらく帰つて参りませんぞや。」
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
平次は懐中を捜して青銭を二三枚掴み出すと、乞食坊主の鉄鉢てつばちの中に入れてやりました。
老和尚これをとらへて、徒弟とていささげたる三八八鉄鉢てつばちれ給ふ。
他の——平安朝期の鍍金仏器、永正古図、薬師後背仏、永享七年銘の鉄鉢てつばち、磐梯明神田植絵巻などという奈良京都の列へ持ち出しても遜色のない歴乎とした寺宝のこけんにかかわるというものである。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)