釣師つりし)” の例文
長吉ちやうきち釣師つりしの一人が握飯にぎりめしを食ひはじめたのを見て、同じやうに弁当箱べんたうばこを開いた。開いたけれどもなんだかまりが悪くて、たれか見てゐやしないかときよろ/\四辺あたり見𢌞みまはした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
長吉は釣師つりしの一人が握飯にぎりめしを食いはじめたのを見て、同じように弁当箱を開いた。開いたけれども何だか気まりが悪くて、誰か見ていやしないかときょろきょろ四辺あたりを見廻した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
幸ひ午近ひるぢかくのことで見渡みわたす川岸に人の往来わうらい杜絶とだえてゐる。長吉ちやうきち出来できるだけ早くめしでもさいでもみん鵜呑うのみにしてしまつた。釣師つりしはいづれも木像のやうに黙つてゐるし、甘酒屋あまざけやぢゝ居眠ゐねむりしてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)