金蔓かねづる)” の例文
して、ひた隠しに隠したんだ。うっかり明るみへ出ると、縛られるのは出羽屋ばかりでなく、その上、大事な金蔓かねづるがなくなるからな
金権政治の金蔓かねづるを絶つためにはこれもやむをえないのだと北槻中尉らは言うが、俺は奴らの積悪に対してこれは当然のことだと考える。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「なにしろおふくろに死なれちゃいましてね、金蔓かねづるが切れちまったもんだから、商売するんならと、親父が云うのを幸いにね」
おれの女房 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お前さんが其の長安寺の和尚さんとも知らず、粂之助が私の弟ということも知らねえもんだから、旨い金蔓かねづるに有附いたと実ア其の娘をだまかして引張出ひっぱりだし、穴の稲荷の脇で娘を殺し
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いさゝか兼吉を怨む筋は無いといて居りまするが、母親の方は非常な剣幕けんまくで、生涯楽隠居の金蔓かねづるを題無しにしたと云ふ立腹です、——女性をんなと云ふものは、果してかくの如く残忍酷薄なものでせうか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「そうのぼせるな」と六郎兵衛が云った、「とにかく新八はまだ放せない、まだ当分は金蔓かねづるだからな、そこを考えてうまくやれ、のぼせあがると事をこわすぞ」
「イヤな野郎が人を殺すときまるものか、それに松五郎に取つては、お染は情婦でもあり金蔓かねづるでもある」
銭形平次捕物控:260 女臼 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「しくじったな、柿崎」と六郎兵衛は自分に云った、「いいやつらしかったじゃないか、どうして怒らせたんだ、うまくやれば金蔓かねづるになったかもしれないのにさ」
「へツ、冗談でせう。全く良い女ですぜ、親分。半歳ばかり前に、幾太郎が根引いて、圍つたまままだ金蔓かねづるも手も切れてゐないんださうで、一生懸命幾太郎をかばつてゐましたよ」
「へッ、冗談でしょう。全く良い女ですぜ、親分。半歳ばかり前に、幾太郎が根引いて、囲ったまままだ金蔓かねづるも手も切れていないんだそうで、一生懸命幾太郎をかばっていましたよ」