野伏のぶせ)” の例文
あの山には、馬や野菜物さえのべつさらってゆく野伏のぶせりが、たんと巣を喰うているそうな。おおかたそんな無頼者ならずもの仕業しわざであろうが
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あだ名を野伏のぶせかつというわかい男は、もう馬を引き出していた。後は総勢であったが、袴野ノ麿はおれが行かなくともよかろうといった。すると切株の上の女はあたしも行くといい、立ち上った。
それとも野伏のぶせ山賊やまだちたぐいででもあらうかと思つて来たんです。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不憫や、明日から、野伏のぶせりかあ
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
牛飼うしかいの親方かと思われる男だの、法師くずれに違いない者だの、野伏のぶせり姿の髯面だの、どこにも種族的な一致はない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野伏のぶせ、そちが先に立て。」
「この辺は、野伏のぶせりが多いから、悪いやつにいなされたのじゃろう。オオ、オオ、体も氷のようにつめとうなって、さだめし、お辛いことでござったろうに」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日から食には飢え、野伏のぶせりや敵の斥候におびやかされ、暮れては雨露うろのしのぎにも困り、明けては血にそんだ白い足をたがいに励まし励まし逃げるのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですから、時に、暴を働き、治をみだし、徒党となっては群盗と変じ、散じては良民をかすめ、野伏のぶせり野武士などの名をもって呼ばれていますが、その本質は豪放ごうほう任侠にんきょうです。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たまたま家人のうわさにでものぼれば「……悪四郎か。そうだなあ。たぶんは、よくて野伏のぶせりの頭にでもなっているか。さもなくば、散所民さんじょみんの中にでも落ちていることか」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、彼は、尼さんが自分を野伏のぶせりの追剥おいはぎとでも誤解しているのではなかろうかと思い
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんの、野伏のぶせりどもの竹槍などに」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)