醤油樽しょうゆだる)” の例文
もし油桶にてよく治するならば、味噌桶みそおけソワカにても、酒徳利ソワカにても、醤油樽しょうゆだるソワカにても差し支えなきはずである。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
うどんとばかり書いて鍋焼だけは鍋の形で見せ、醤油樽しょうゆだるの中に水を入れ、土瓶どびんつゆが入っているという、本当にくしても売れねえ、ういう訳で
しかも醤油樽しょうゆだる五つに、それぞれ違った物を違った方法で漬け、年じゅう絶やすことがなかった。——ぼろ布を買いにでかけるときは大きな麻の袋を持ってゆく。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
醤油樽しょうゆだる、炭俵、下駄箱、上げ板、薪、雑多な木屑きくず等有ると有るものが浮いている。どろりとした汚い悪水おすいが、身動きもせず、ひしひしと家一ぱいに這入っている。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
と思うまもなく、醤油樽しょうゆだるほどある機械人間ロボットの首がぬっと窓からはいって来た。そしてするすると阿弥陀堂の中へとびこんだ。ああ、あいつだ。例の、怪しい機械人間だ。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
背丈がずんぐりなので醤油樽しょうゆだるか何かでも詰めこんでいるかのような恰好かっこうして、おせいは、下宿の子持の女中につれられて、三丁目附近へ産衣うぶぎの小ぎれを買いに出て行った。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
醤油樽しょうゆだる一つずつを左右の手にさげ、四斗樽を一つずつ左右の足にはいて、この鬼熊が、柳原の土手を歩いたことがある——見るほどの人が、その樽をからだろうと疑って調べてみると
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
母の病気は脚気かっけだった。足が醤油樽しょうゆだるのようにむくみ、心臓を苦しがった。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
東京にいても居酒屋や屋台店やたいみせへ飛込んではっさんくまさんとならんで醤油樽しょうゆだるに腰を掛けて酒盃さかずき献酬とりやりをしたりして、人間の美くしい天真はお化粧をして綾羅りょうらに包まれてる高等社会には決して現われないで
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)