酒盃さかづき)” の例文
私は、酒盃さかづきを投げつけて茫然と立っているマリを街路に連れだして車にのせると車体は海岸線を疾風のように走りだした。
スポールティフな娼婦 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
「主よ。もし御心に適ふならば、この苦き酒盃さかづきを離し給へ。されどなんぢにして欲するならば、御心のままに爲し給へ。」
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
かうふ時には酒がなくてはならぬと思つて、台所だいどころを探し𢌞まはつたが、女世帯をんなじよたいの事とて酒盃さかづき一ツ見当みあたらない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此花咲けば此頃よりやがて酒のあぢはひうまからずなりて、菊の花咲くまでは自ら酒盃さかづきに遠ざかること我が習ひなり。人は如何にや知らず、我は打対ひて酒飲むべき花とは思はず。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
かうした心の告白をするために、故意わざ酒盃さかづきを重ねてゐるやうにさへ、瑠璃子に思はれた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
やツぱし日本の酒盃さかづきなのよ。
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
青白い妖怪の酒盃さかづき
蝶を夢む (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)