遠路えんろ)” の例文
その文面はすこぶる鄭重ていちょうを極めたもので、「遠路えんろながら御足労を願い、赤耀館事件の真相につき御聴取をわずらわしたく云々」とあった。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この日残暑の夕陽せきよう烈しきに山谷の遠路えんろをいとはずしてわが母上も席につらなり給ひぬ。母は既に父いませし頃よりわが身の八重といふれそめける事を知り玉ひき。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
遠路えんろ浜松城はままつじょうからおこしのお使者、ごくろうです。福島市松ご案内あんないもうしあげる。こちらへ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「帰りがけの些細な土産ものやなにか、一寸ちょっと用達ようたしに出掛けておりますので、失礼を。その娘の如きは、景色より、見物より、蟹をくらわんがために、遠路えんろくッついて参りましたようなもので。」
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)