かぢ)” の例文
いかにしたるか車夫はぴつたりとかぢを止めて、誠に申かねましたが私はこれで御免を願ひます、代は入りませぬからお下りなすつてと突然だしぬけにいはれて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『お嬢様ぢやうさあ、お嬢様とこのお客様を乗せて来ただあ。』と、車夫の元吉は高い声で呼びかけ乍らかぢを止めて
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
不思議にも無難に踏留ふみとどまりし車夫は、この麁忽そこつに気を奪れて立ちたりしが、面倒なる相手と見たりけん、そのままかぢを回して逃れんとするを、俥の上なる黒綾くろあや吾妻あづまコオト着て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さやけきつきかぜのおとひて、むしたえ/″\にものがなしき上野うへのりてよりまだ一てうもやう/\とおもふに、いかにしたるか車夫しやふはぴつたりとかぢめて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
虫のたえだえに物がなしき上野へ入りてよりまだ一町もやうやうと思ふに、いかにしたるか車夫はぴつたりとかぢを止めて、誠に申かねましたが私はこれで御免を願ひます
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)