車窓まど)” の例文
駅燈がちらと車窓まどをかすめると、やがて車体が転車台のところでがたがたおどったものだから、うとうとしかけたばかりの若い女は、その震動と音響で目をさました。
『休暇で帰るのに見送みおくりなんかて貰はなくツてもいと言つたのに、態々わざわざ俥でやつて来てね。麦酒びーるや水菓子なんか車窓まどン中へ抛り込んでくれた。皆様みなさんに宜敷ツて言つてたよ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『休暇で歸るのに見送りなんかて貰はなくつても可いと言つたのに、態々俥でやつて來てね。麥酒ビールや水菓子なんか車窓まどン中へはふり込んでくれた。皆樣に宜敷よろしくつて言つてたよ。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
途中の焦燥もどかしさは、まるで際涯はてしもない旅をしている気持であった。畑や村が車窓まどをかすめて後へ後へと消え、沿道の電線は、鞦韆ぶらんこからでも眺めるように、目まぐるしく高まったりちこんだりした。
情状酌量 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
車窓まどの前を野が走り木立が走る。時々、おびただしい草葉の蒸香いきれが風と共に入つて来る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
若い男がそういって車窓まどをあけると、老紳士は額を拭きながら