足袋跣たびはだし)” の例文
背をかがめて、疾走していた道之進は、用水堀の土橋のたもとまで来たとき、足袋跣たびはだしの足を、凍てた雪に踏み滑らせて、だっと顛倒した。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
多分それは小形の足袋跣たびはだしの跡でなければならぬのに、それがどこにも見当らなかったのだ。そこで、轢死者が男の靴を穿いて線路まで来たか。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
庭前にガサ/\と物の摺れる音がするので、振り向いて見ると、菅笠に足袋跣たびはだしの翁が、天秤棒の先に風呂敷包を一つ担いで、此の晴天に先日の簑を着込んで御坐る。
大野人 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
始終たすきがけの足袋跣たびはだしのままで、店頭みせさきに腰かけて、モクモクと気忙きぜわしそうに飯をッ込んでいた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
むこ姿の平次、せわしく羽織をかなぐり捨てると、足袋跣たびはだしのままパッと裏庭へ飛出しました。
うめくやうに言つて、ぶる/\と、ひきつるが如く首をる。かれは、四十ばかりの武士さむらいで、黒の紋着もんつきはかま足袋跣たびはだしで居た。びん乱れ、もとどりはじけ、薄痘痕うすあばた顔色がんしょく真蒼まっさおで、両眼りょうがんが血走つて赤い。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むこ姿の平次、せわしく羽織をかなぐり捨てると、足袋跣たびはだしのままパッと裏庭へ飛出しました。