足拍子あしびょうし)” の例文
「はははは。そうらしいな。寒さを克服なさるため、足拍子あしびょうしにあわせて、書物のうちのお好きな辞句じくでも、吟誦ぎんしょうしていらっしゃるのであろう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は眺むるうちに図中おのずか出語でがたりの三味線と足拍子あしびょうしひびきをさへ聞くが如き心地ここちせり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
でもカピは評判ひょうばんがよかった。かれはいく度もアンコールを受けた。カピのおかげで興行こうぎょうれるようなかっさいで終わった。かれらは両手をたたいたばかりでなく、足拍子あしびょうしをふみ鳴らした。
びまわり、はねまわり、一寸法師いっすんぼうしの前へ立ってせいくらべをしたり、ぞうのそばへ来てふくろの下から長い鼻をのぞいたり、楽隊といっしょに足拍子あしびょうしを取ったり、ライオンやとらくまをこわごわと見たり
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
すっと起って、足拍子あしびょうしを踏み出しながら。「みなもうたえ。高時と一しょに謡え」と、あたりの諸将へ合唱をうながした。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矛盾むじゅんの世が生んだ矛盾の子尊氏と、悲心のひと正成の祈りとを、清次の一つ姿に、足拍子あしびょうしもとどろにえがき——そして舞い終ってもなおなかなか終る気色はなかった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)