足利あしかゞ)” の例文
「あれもな、不仕合せでな。足利あしかゞに行つてついこの間まで一人でゐたが、今ぢや亭主でも持つたか何うか。」
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
丁度あの鳶頭が来た翌日あくるひでした、吉原なか彼女やつ駈落かけおちと出懸けやしたがね、一年足らず野州やしゅう足利あしかゞで潜んでいるうちにかゝあは梅毒がふき出し、それが原因もとで到頭お目出度めでたくなっちまったんで
一面この特性あるを許すとせんも、他面悲哀厭世の特質を看過するを得べきか。祇園精舎ぎをんしやうじやの鐘の音に人生の無常を観ぜし当年の鎌倉武士、足利あしかゞ時代の国民は如何いかさまにか之れを解すべき。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
昔は人物技藝ぎげい一世にひいでた者を任じたのですが、後、足利あしかゞ時代から賣官の風が行はれ、江戸時代には賣官料まで公定されて、一階一兩から四十五兩に及び七十三刻をあはせると都合七百十九兩
それにまた蚕卵紙たねがみかいこに仕立てます故、丹精はなか/\容易なものでは有りませんが、此の程は大分だいぶ養蚕が盛で、田舎は賑やかでございます。養蚕を余り致しませんところ足利あしかゞの方でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)