赤誠せきせい)” の例文
「いや、今度は決心が堅い。俺も酒では長いことお前に苦労をかけた。いよ/\この一杯で永遠の禁酒だ。赤誠せきせいを示すぞ」
一年の計 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おどかしに白刃を見せたら、或はもろく逃げ散るかも知れないと思ったが、土民とはいえ、領主の身を思っての赤誠せきせいであってみると、案外、そうでないかも分らない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父同様に育ててくれた祖父そふに、一眼会いたいというお美夜坊のまごころ——また、不孝をしつづけてきた老父に、最後の詫びを願いたいというお蓮どのの赤誠せきせい
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は押勝の命を受け、まるで腹心の手先のような赤誠せきせいを示して出掛けて行った。主謀者達は、諸王も諸臣も召捕られた。然し白状したものは、小野東人だけだった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
自由民権のあらわれである自治政治と議会政治は、板垣の赤誠せきせいを裏切って日本を腐敗堕落させた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
赤誠せきせいに富みまするも、教育事業の資本家たる諸君の助力なかりせば、あたかもこれ糧食なくして戦陣に臨むと一般で、如何いかなる勇将猛卒ゆうしょうもうそつくその功を奏する事ができざる如く
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「西郷に会おう。西郷は知己だ。会って赤誠せきせいを披瀝しよう」
開運の鼓 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、船から赤誠せきせいを送った。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)