赤蕪あかかぶ)” の例文
土地で一番豊富なのは豆のもやしと赤蕪あかかぶであり、銀子は自分も好きな赤蕪を、この八百屋に頼んで、東京へ送ったりしたことから懇意になり、風呂ふろの帰りなどに
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
背にかばって立った教授が、見ると、繻子しゅすの黒足袋の鼻緒ずれに破れたやつを、ばたばたと空にねる、治兵衛坊主を真俯向まうつむけに、押伏せて、お光が赤蕪あかかぶのような膝をはだけて
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山家では沢庵漬たくあんづけの用意なぞにいそがしかった。いずれももう冬じたくだ。野菜をたくわえたり、赤蕪あかかぶけたりすることは、半蔵の家でも年中行事の一つのようになっていた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある店では、紋のついた油障子の蔭から、赤いかにや大粒のはまぐりを表に見せていた。ある店では、ショウウィンドーの中に、焼串やきぐししぎを刺して赤蕪あかかぶ和蘭芹オランダぜりと一しょに皿に並べてあった。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)