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賣盡
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うりつく
急ぎて
當所迄來りし所此病氣に
取付れ
假初の樣なれどもハヤ二年越しの
長煩ひに貯はへ殘らず
遣ひ捨其上お花の
櫛笄ひ迄も
賣盡し外に
詮方も無りしに此家の主人がお花の苦勞する樣子を
皆賣盡し今は
必至の場合に至りければ何がなして
猶資本を
拵へ大
賭場を
拂ふ心なしとは
云ものゝ
切ては此家の旅籠だけも後藤に聞せず拂ひたしと
猶種々に相談なせしに妻のお梅は是までにも
櫛簪などは追々に
賣盡し今は
着替一つ
有而已なれども此上は
其着替にても
賣代なし旅籠の代に
當んと申故市之丞も
詮方なく然らば我等の着替羽織とも未だ
之有により夫を