貪婪たんらん)” の例文
それだから寒月には、あんな釣り合わない女性にょしょうは駄目だ。僕が不承知だ、百獣のうちでもっとも聡明なる大象と、もっとも貪婪たんらんなる小豚と結婚するようなものだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人魚はこうして貪婪たんらんにひかる眼つきをしてしきりに魚をとらえて食べましたが、ついに、巨大な昆布の林のなかにはいっていって、そこへ脱糞をこころみました。
人魚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
王公諸臣多く山沢を占めて耕種を事とせず、きそつて貪婪たんらんを懐き空しく地利を妨ぐ。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
その歡喜に見ひらかれた眼には、肉感や淫猥を拔け出た貪婪たんらんさが溢れてゐた。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
貪婪たんらん飽くなき岩でこの、ひそかにその爪牙を磨き、梅坊主を陥れ、ついにこれを追って自分がそのあとに直るに到ったのを憎み、そうして、わが梅坊主のため、万斛ばんこくの泪をそそぐのにあった。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
饑渇きかつせめや、貪婪たんらん羽蟲はむしむれもなにかあらむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ありぢごくの貪婪たんらんひとみ
饑渇きかつせめや、貪婪たんらん羽虫はむしむれもなにかあらむ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)