負目おいめ)” の例文
でも、それが自分であり、どうしてそれが私の負目おいめにならなければならないのか。……ふと、私は昨夜ささやいた彼の言葉を思い出した。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
横田さんは人に恩を売ることが嫌いな人格者だから、わざと知らない風をして、周平に気持の上の負目おいめを与えまいとしたのだ。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしはそんな負目おいめさえ感じて、みんなをじろじろみる事がどうしても出来ない気持ちなのです。
行かんとすれば行き、止まらんとすれば止まる自由行動を、いまかつて何人のために掣肘せいちゅうされるほどの負目おいめを持っていない米友が、なぜか、このお角さんばっかりを怖れます。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
只もう可愛い情夫おとこ、それは彼女の肉と精神こころのすべてを捧げた恋人であったのだ。彼は、逆上した瞬間に人をあやめた。しかしその恐ろしい負目おいめは、もう払ってしまったではないか。
碧眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
いわば負目おいめのあるなかまでした、それもありこれもあって、あっしは野郎を片づける気になったんです、ただどうか、くどいようだがおようさんを仕合せにしてやっておくんなさい
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
助けられてこれへ来た負目おいめもあり、一別いらい、こよい久々で見た道誉は、さすが陣中の人らしく、うかとは、“さかな”にもできないようなおそれが多少兼好にもしていたのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
受ける方から云えば、口先の感謝で心の負目おいめを軽くしようとするのは、卑怯な態度である。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)