讃州さんしゅう)” の例文
「蛇性の婬」は支那の西湖佳話せいこかわの翻案であるが、これは馬琴が自ら筆記して、讃州さんしゅう高松藩たかまつはん家老かろうに送つたものであるから、まさかに翻案や捏造ねつぞうではあるまいと思はれる。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
讃州さんしゅうの方にももしや飛び飛びに、そういう名は残っておらぬかどうか。たった二つでは何分にも心もとないが、この方ならば少しばかりの心当りが東日本にもあるのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼は讃州さんしゅうに遊びしこともありけん、句集に見えたり。また厳島いつくしまの句あるを見るにこの地の風情ふぜい写し得て最も妙なり、空想の及ぶべきにあらず。蕪村あるいはここにも遊べるか。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なんとなく雲脚くもあしの早さを思わせるような諸大名諸公役の往来は、それからも続きに続いた。尾張藩主の通行ほど大がかりではないまでも、土州としゅう雲州うんしゅう讃州さんしゅうなどの諸大名は西から。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ガラッ八が案内したのは、讃州さんしゅう志度しど海女あまの見世物、龍王の明珠めいしゅを取った、王朝時代の伝説にかたどり、水中に芸をさせるのが当って、その頃江戸の評判になった興行物の一つでした。
讃州さんしゅう丸亀まるがめ京極きょうごく阿波あわ徳島とくしま蜂須賀はちすか、姫路の本多、伊予の松平など、海には兵船をつらね、国境には人数を繰出くりだし、この赤穂領を長城ちょうじょうの壁のように囲んで、やじり砲筒つつを御家中へ向けている
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)