論旨ろんし)” の例文
そして論旨ろんしを一転して青年の思想問題に入りかけたが、そのころからかれの言葉は次第しだいにみだれがちになり、またしばしばゆきづまった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
今までの論旨ろんしをかいつまんでみると、第一に自己の個性の発展を仕遂しとげようと思うならば、同時に他人の個性も尊重しなければならないという事。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「どうも論旨ろんしが、少々唯心論的ぢやありませんかな」と、隣の男がその連れに話しかける。若い教員風の男である。
ハビアン説法 (新字旧仮名) / 神西清(著)
従来その伊豆伍が一手に引き請けていたお城の油御用を取り上げ、その株を下谷長者町の筆幸、筆屋幸兵衛へ移し下げて然るべきだ、という論旨ろんしなのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
カビ博士は、日頃のとつべんとはうってかわって雄弁に論旨ろんしをすすめていた。しかし僕は白状するが、博士の熱弁を聞くのは、もうそのくらいで沢山だと思った。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
只今ただいまのご論旨ろんしは大へん面白いので私も早速空気を吸うのをやめたいと思いましたがその前に一寸一言ご返事をしたいと存じます。どうぞその間空気を吸うことをお許し下さい。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かれの信念の自然の発露はつろであったかもしれないが、——「国体」とか、「陛下」とか、「大御心」とかいう言葉で、自分の論旨ろんし権威けんいづけることに努力した。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
大へん温和おとなしい論旨ろんしでしたので私たちは実際本気に拍手しました。すると私たちの席から三人ばかり祭司次長の方へ手をあげて立った人がありましたが祭司次長は一番前の老人を招きました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こういうのがその時の私の論旨ろんしであった。そうしてその論旨はけっして充分なものではなかった。もっと先方の主張を取り入れて、周到な解釈をくだしてやる余地はいくらでもあったのである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)