言分いいぶん)” の例文
百合 (サソクにその鎌を拾い)皆さん、私が死にます、言分いいぶんはござんすまい。(と云うより早く胸さきを、かッしと切る。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで、靴屋のおじさんと少年たちとの言分いいぶんをじっと聞いていた鍛冶屋軍曹は、やがて、強い感動をあらわしていった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は彼なりに心の中では言分いいぶんが無いでもない。いわゆる君子なるものが俺と同じ強さの忿怒ふんぬを感じてなおかつそれを抑え得るのだったら、そりゃ偉い。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
斎藤太郎左衛門さいとうたろうざえもんむすめが出る。五百はこれを聞きつつ思案した。これは負けていては際限がない。ためしを引いて論ずることなら、こっちにも言分いいぶんがないことはない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
二葉亭の言分いいぶんを聞けば一々モットモで、大抵の場合は小競合いの敵手の方に非分があったが
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
……大チャンがその女の声に感じているのは、一つの純粋、一つの無垢むくというものだろうか、と私は考えたが、私には、どうにもそのときの大チャンの言分いいぶんは理解できなかった。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
おい、如何どうだ。樫君かしくん言分いいぶんがあるなら、聞こうじゃないか
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「君、それは失敬な言分いいぶんじゃなかろうか?」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
というのが佐々刑事の言分いいぶんであった。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)