触覚しょっかく)” の例文
旧字:觸覺
「あのふさふさしているのは、触覚しょっかくのある鞭毛べんもうかと思ってはじめはびっくりしたが、そうじゃない。あれは何の用もしないものさ。いやどうもばけものみたいだなあ」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でさせたおよそ盲人は触覚しょっかくをもって物の存在を確かめなければ得心しないものであるから
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やっと安心した良平は金三の顔色かおいろうかがいながら、そっと左の芽にさわって見た。赤い芽は良平の指のさきに、妙にしっかりした触覚しょっかくを与えた。彼はその触覚の中に何とも云われない嬉しさを感じた。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
手に持つと離せない気のするような触覚しょっかくなのだ。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんずるに視覚を失った相愛の男女が触覚しょっかくの世界を楽しむ程度は到底われの想像を許さぬものがあろうさすれば佐助が献身けんしん的に春琴につかえ春琴がまた怡々いいとしてその奉仕を求めたがいむことを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)