見別みわ)” の例文
汽車は駿河湾するがわんに沿うて走っている。窓外は暗闇まっくらだが、海らしいものが見別みわけられる。涼しい風が汗でネバネバしたはだを気持よくでて行く。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
この部屋の様子は、広っぱの方からは、杉の木立が邪魔じゃまになってよくは見えないし、たとえ見えたところで、遠方のことだから、俺の顔まで見別みわけられる筈はない
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この拍子を見別みわけるやうになると、物の巧者だといへる。だが断つておくが、諸君の夫人の顔立が拍子にかなはないからといつて、それは茶話記者の知つた事ではない。
稍〻やゝありて太息といきと共に立上たちあがり、昔ありし我が屋數やしきを打見やれば、其邊は一面の灰燼となりて、何處をそれとも見別みわけ難し。さても我父は如何にしませしか、一門の人々と共に落人おちうどにならせ給ひしか。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)