襟留えりどめ)” の例文
貴婦人はこの秋霽しゆうせいほがらかひろくして心往くばかりなるに、夢など見るらん面色おももちしてたたずめり。窓を争ひて射入さしいる日影はななめにその姿を照して、襟留えりどめなる真珠はゆる如く輝きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お今はお増の鏡台や、櫛笄くしこうがいだの襟留えりどめだの、紙入れなどのこまこました持物に心が残った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
学士は又、そんな関わない風采ふうさいの中にも、何処どこ往時むかし瀟洒しょうしゃなところを失わないような人である。その胸にはネキタイが面白く結ばれて、どうかすると見慣れない襟留えりどめなぞが光ることがある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)