衣帯いたい)” の例文
旧字:衣帶
官人の、真前まっさき飛退とびのいたのは、あえおびえたのであるまい……衣帯いたいれるのをつつしんだためであらう。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
董承は、がくとして、その面を見つめていたが、吉平の義心を見きわめると、今はこの人につつむ理由もないと、一切の秘事をうちあけた後、血詔けっしょう衣帯いたいをとり出して示した。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一刻後の彼は、縄目の死地からにわかにそのの客院の客としてあがめられていた。浴室で負傷の箇所には手当をうけ、また肌着はだぎ衣帯いたいなども、すべて新しいのとかえられていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……馬騰。忘れはおるまいな。むかし国舅こっきゅう董承とうじょうと汝へ降したちん衣帯いたいの密詔を。……あの折は、未然に事やぶれたが、このたびそちが上洛の由を聞いて、いかに朕が心待ちしていたかを察せよ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)