街路みち)” の例文
相応の賑ひを見せて居る真砂町の大逵おほどほりとは、恰度背中合せになつた埋立地の、両側空地の多い街路みちを僅か一町半許りで社に行かれる。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
白っぽい街路みちの上に瓦の照返しが蒸れて、行人の影もまばらに、角のところ天屋ののぼりが夕待顔にだらりと下っているばかり——。
謙作はすこしも心にかけていないようなことを云い云い女の傍を通って外へ出たが、横街よこちょうのほうは見ずにそのまま初めの街路みちを逃げるように歩いて往った。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
男は、前よりも俛首うなだれて、空気まで凍つた様な街路みちを、ブラリブラリと小さい影を曳いて、洲崎町の方へ去つた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると、街路みちの向うで二つの黒い影が固まり合って動いているのがおぼろに見え出した。一人は今の女、もう一人は遠眼からもりゅうとしたお侍らしかった。
街路みちは八分通りかげつて、高声に笑ひ交してゆく二人の、肩から横顔を明々あかあかと照す傾いた日もモウ左程暑くない。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
男は、前より俛首うなだれて、空氣まで凍つた樣な街路みちを、ブラリブラリと小さい影を曳いて、洲崎町の方へ去つた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
街路みちは鏡の如く滑かで、少し油断をすると右に左にすべる、大事をとつて、足に力を入れると一層辷る。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
街路みちの両側には、門々に今を盛りと樺火かばびが焚いてある。其赤い火影ほかげが、一筋町の賑ひを楽しく照して、晴着を飾つた徂来ゆききの人の顔が何れも/\酔つてる様に見える。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
町は悦気たのしげ密語さざめきに充ちた。寄太鼓よせだいこの音は人々の心を誘ふ。其処此処に新しい下駄を穿いた小児こどもらが集つて、樺火で煎餅などを焼いてゐる。火がぜて火花が街路みちに散る。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
竹山の室は街路みちに臨んだ二階の八疊間で、自費で据附けたと云ふ煖爐ストーブが熾んに燃えて居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
竹山の室は街路みちに臨んだ二階の八畳間で、自費で据附けたと云ふ暖炉が熾んに燃えて居た。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
火光あかりまばゆく洩れて、街路みちを横さまに白い線を引いてゐたが、虫の音も憚からぬ酔うた濁声だみごゑが、時々けたゝましい其店の嬶の笑声を伴つて、喧嘩でもあるかの様に一町先までも聞える。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)