しょく)” の例文
またいわく尾ある猴は月減ずる時甚だ欝悒うつゆうし新月を望んで喜び躍りこれを拝むと、他の諸獣も日月しょくおそるるを見るとさような事もありなん。
この態度で彼は太陰太陽の週期の異なる理由、昼夜の長短の生ずる理由、月の盈虚えいきょ、日月のしょくの原因等に関する説明の可能なものを多数に列挙している。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
第一種(天変編)天変、日月、しょく、異星、流星、日暈にちうん虹蜺こうげい、風雨、霜雪、雷電、天鼓、天火、蜃気楼、竜巻
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
丁度金星や水星が、小さい黒点となって太陽の表面をしょくしつつ通過する時と同じ事だ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
恒星のごとき民衆にも時におのれをしょくするの権利がある。ただ、光が再び現われさえすれば、日蝕が暗夜に終わりさえしなければ、すべてかまわない。あけぼのと再生とは同意義である。
枕山は例年の如く中秋観月の詩筵しえんを開くがためにその時節には江戸に還っていた。良夜を約して枕山湖山雲濤の三詩人は舟を墨水にうかべ橋場の柳屋に登ったが、この夜月はしょくした。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大マルズック星(木星)が天界の牧羊者(オリオン)の境を犯せば神々のいかりくだるのも、月輪の上部にしょくが現れればフモオル人が禍をこうむるのも、みな、古書に文字として誌されてあればこそじゃ。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そののち日月じつげつしょくす幾秋ぞ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
それは消し去ること以上で、しょくし去ることであった。