蜉蝣ふゆう)” の例文
もしさいわいにして大王敗れたまわずして功成りたまわば、後世の公論、大王を如何いかんの人とい申すべきや。巍は白髪の書生、蜉蝣ふゆう微命びめい、もとより死をおそれず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いはンヤ吾トなんぢ江渚こうしよノホトリニ漁樵ぎよしようシ、魚鰕ぎよかつれトシ、麋鹿びろくヲ友トシ、一葉ノ扁舟へんしゆうニ駕シ、匏樽ほうそんヲ挙ゲテ以テ相属あひしよくス、蜉蝣ふゆうヲ天地ニ寄ス、びようタル滄海そうかい一粟いちぞく、吾ガ生ノ須臾しゆゆナルヲかなし
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さりとは哀しいことを拜見いたしまする。銀猫をなげうち、愛着のきづなを斷ち、あはれ芭蕉の破れ易きをいたみ、蜉蝣ふゆうのあだなるをかなしまれしといふは、誰のことでござりまするか。ハイ。
山家ものがたり (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蜉蝣ふゆうの命、あしたの露、そも果敢はかなしといわば言え、身に比べなば何かあらむ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから某君によりて昆虫の標本を示され、美しい蝶、命短い蜉蝣ふゆうの生活等につき面白い話を聞いた。にれの蔭うつ大学の芝生、アカシヤの茂る大道の並木、北海道の京都札幌はい都府である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼女の短かき生涯は、その一切の瑕瑾かきんと不完全を以てして、遂に人生最高の理想を追い、之れが為めに戦い、戦い半ばならずしてたおれし英雄の生涯也。遂に蜉蝣ふゆうの如き人生は、生きて甲斐なけん。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)