蜀魂ほととぎす)” の例文
今や工場こうじょう煤烟ばいえんと電車の響とに日本晴にほんばれの空にもとんびヒョロヒョロの声まれに、雨あがりのふけた夜に月は出ても蜀魂ほととぎすはもうかなくなった。
そこで釣寄つりよせて置いて……ほんありがた山の蜀魂ほととぎす、一声漏らそうとはうれしいぞえ嬉しいぞえ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
気の変ることの極めて早い、むしろ鋭いといってもい。この女の心は美しく、磨いた鏡のようなものであろう、月、花、うぐいす蜀魂ほととぎすきたって姿を宿すものが、ありのまま色に出るのである。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蜀魂ほととぎす啼や琴引御簾みすの奥 吾仲
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)